特異点(しゃちょ〜)

みなさん。立ったまま寝れますか?たまに、電車でつり革にぶら下がったまま(?)寝ている人を見かけます。そして次の瞬間、ガクッと膝が折れてびっくりして起きています。見ている方がさらにびっくりしますが。
空港などの警備員の人も、立ったままフラフラと前後に揺動しながら寝ています。ある種の特殊技能でしょうか?ちなみに、あれは体の特異点(特異姿勢)という位置(姿勢)を巧く使っているんですね。なので、体にはほとんど負荷がかからない。
ダンボールなどもそうですが、横(面の方向)から押すとフニャフニャですが、波々が見える方から押すと、意外と硬い。割り箸でも箸の両端を持って曲げると簡単に折れますが、長手方向から押してもビクともしません。つまり、構造自体が持っている強さを利用しているわけです。このように、構造上、それ以上、そっちの方向に動かせない姿勢を特異姿勢と呼び、その場所を特異点と言います。下図のAのようなロボットアームでは、BやCの姿勢は、矢印方向には動かせないので特異姿勢となります。ロボットの脚に注目すると、膝を伸ばしきった状態がそれにあたります。別に、膝を伸ばしてはいけないというのではありません。ロボットを歩かせようとして、足先の軌道を設計する際、逆運動学という手法を使います。細かい話は後日書きますが、この時に、膝を伸ばしきった姿勢に持っていこうとすると解が発散してしまい計算が出来なくなってしまうので、常に膝を曲げた軌道を生成させているのです。なので、テレビでよく見るロボットは、常に腰を落としたような姿勢で歩いているわけです。
そうすると、常にモータには負荷がかかり続けるわけで、結果として高価なモータを使わなければならなくなります。
他の手法を使えば特異点を通るような軌道を作ることは出来ます。そうすればモータの負荷も減るのでコストも下がります。でも、特異点の姿勢のまま脚を床に接地させると、今度は逆に床半力(いわゆる衝撃)を逃がす方向がなくなっちゃうわけで、全身でその衝撃を受けなければならなくなってしまいます。足が少しでも曲がってれば、そっちに力を逃がせますからね。
なので、特異点を使うか使わないかは、設計者の思想次第といったところでしょうか。