トリムって何なの?(しゃちょ〜)

組立ロボットを購入して組立マニュアルを眺めてみると、「センターポジション」「初期姿勢」「イニシャルポジション」「ホームポジション」など、似たような名前が出てきて、どれがどの姿勢なのかが分からなくなります。
その中でも、「トリム」が余計に理解を妨げている言葉になっています。
ということで、簡単に「トリム」とは何?という話をしてみたいと思いますが、トリムとはそもそもラジコン用語で、当初、ラジコン用サーボをロボットに転用したがために、トリムという言葉もロボット業界に一緒に入ってきてしまいました。

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ラジコンは組立キットで、そのセッティングなどで速さや安定性が変化することが、多くのホビエストを魅了してきました。そのラジコン業界において、サーボは車輪の操舵(ステアリング)用として主に使用されてきました。そのため、部品の多くは長さや位置が一意に決まらない方法で組立てる必要があります。

ラジコンのステアリングのセッティングの一つにトー角の調整があります。

この調整をするために、ターンバックルの長さを調節します。しかし、2本のターンバックルの長さを調節しても、車輪が同じ角度(トー角)になっている保障はありません。両輪のトー角が全く同じでないとラジコンは直進せずに、序々にどちらかに曲がっていきます。そこで、ある程度正確にターンバックルにより両輪のトー角を調整した後、サーボの中央位置を少しズラすことで、トー角を微調整します。
ラジコンでは、プロポのスティック横にトリム調整用のダイヤルが付いており、これを動かすことで、サーボの中央位置を調整できます。これにより、組立時の誤差やサーボの個体差などを吸収することが可能となります。

特にサーボの出力軸は、伝達を確実な物とするため、セレーションという奇数の歯が彫ってあり、これにサーボホーンを取り付けることで、高負荷にも耐えられる伝達機構を実現しています。しかし、20山程度の歯であるため、サーボホーンの取り付け位置はある程度の分解能しか持ちません。この誤差も、トリム調整で吸収することになります。

ロボットを組み立てる際、その後のモーションなどを他のユーザと共有できるようにするために、サーボを決めた位置で固定した上で組み立てる必要があります。そのために、まず全サーボを制御用コントローラ(RCB-3など)を用い、トリム角を0度、位置を90度(中央位置=センターポジション)に移動させます。その上で、決められた形状になるようにロボットをくみ上げます。この状態を「センターポジション(イニシャルポジション、初期姿勢)」と呼ぶこととします。センターポジションの姿勢になるように機構をくみ上げた際、微妙に組み付け角度がズレている部分に関して、制御用コントローラのトリム角調整機能により調整をかけます。この際、トリム角調整が±10度を超えるような関節に関しては、サーボホーンの取付を変更するなどして、トリム角調整が±10度以下(±5度以下が望ましい)に組みなおします。正しくセンターポジションを設定できた所で、配布されているホームポジションデータを制御用コントローラに書き込むと、ホームポジションになります。各モーションは、この姿勢からの相対姿勢を作っていくことになります。

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ということで、最初っからホームポジションを各自で作ってしまい、それを各自のホームポジションデータ(これはユーザ間では共有できません)とすれば、「トリム」という言葉を使わずにロボットを動かせます。
最近のロボット用シリアルサーボなどは、トリム無しで動かせるので、今後は、トリムという言葉は徐々に消えていくと思います。